怖い話「呪われた郵便ポスト—届けられた不吉な手紙」
17歳の翔太は、都会の喧騒を逃れ、夏休みを過ごすために田舎の祖父母の家にやって来た。古い町並みが続くその地域は、時代に取り残されたかのような静けさが漂っている。ある日、翔太は散歩中に見慣れない郵便ポストを発見した。色褪せた赤いポストがひっそりと佇んでいるが、周囲に家屋はない。妙に違和感を覚えながらも、好奇心から近づいてみた。
そのポストには、古びた手書きのプレートが掛かっており、「使用不可」と記されている。しかし、翔太が目を引いたのはその隣にある小さな張り紙だった。「ここに投函された手紙は、決して戻ることはない」。翔太は一瞬鳥肌が立ったが、それを忘れようとし、その場を離れた。
数日後、祖父母の家に戻ってからも、あのポストのことが頭から離れなかった。そして、ふと自分の鞄の中から見知らぬ封筒が出てきた。消印のない真っ白な封筒には、何も書かれていない。誰がいつ投函したのかも分からないが、翔太はそのまま開封してしまう。
中には一枚の手紙が入っていた。「お前がここに来るのを待っていた」とだけ記されている。心臓が早鐘のように鳴り始め、翔太は無意識に手紙を握りつぶした。どうして自分の元にこんなものが届いたのか、理解できなかったが、すぐに手紙を捨てることにした。
その夜、翔太は悪夢にうなされた。無数の手紙が彼を追いかけ、押しつぶしてくる恐怖の夢だ。朝になってもその感触が消えない。再びポストを見に行くことを決意した彼は、その場所に足を向けた。しかし、奇妙なことに、ポストは消えていた。そこには、ポストがあった痕跡すら残っていない。
驚きと恐怖に打ちひしがれた翔太は、再び手紙のことを思い出し、ゴミ箱を確認する。そこに捨てたはずの手紙は消えていた。代わりに、郵便ポストがある風景が描かれた不気味な絵がゴミ箱に入っていた。
それ以降、翔太の周囲で不可解な現象が頻発し始めた。電化製品が勝手に動いたり、影が彼の背後を通り過ぎたりすることが増えた。夜になると、遠くから何かが彼の名前を呼ぶ声が聞こえてくる。翔太は次第に追い詰められ、あの手紙と郵便ポストに関連していると確信する。
ある日、翔太が再び町を歩いていると、街角にあのポストが突如現れた。逃げ出したい気持ちに駆られたが、何かに操られるかのように彼はポストに近づき、その中を覗き込んでしまった。
ポストの中は空ではなかった。奥底に黒くうねる空間が広がっており、異次元へと続く扉のようだった。翔太が息を飲む間もなく、手がポストの中から飛び出し、彼を引きずり込もうとした。彼はなんとか逃げ出したが、その瞬間、自分の手には再びあの手紙が握られていた。
「もう逃げられない」と書かれた文字がにじむように浮かび上がり、翔太は恐怖に打ち震えた。
それ以来、翔太は夜ごとポストに引き寄せられる夢を見る。夢の中で、ポストの中から無数の手紙が溢れ出し、彼の周囲を取り囲む。目が覚めても、その恐怖は消えることがない。
手紙は未だに彼の元に届き続け、どこに捨てても、必ず手元に戻ってくるのだ。