怖い話「呪われたビデオ:見てはいけないもの」
ある日、田中という男が友人から古びたビデオテープを手に入れた。ビデオデッキがすでに時代遅れだったため、誰もそのビデオを見ようとはしなかったが、田中はなぜか強く引かれ、その晩一人で見ることにした。
ビデオが始まると、映像はノイズだらけで、最初は何も映っていないように見えた。しかし、次第に画面に異様な光景が浮かび上がってきた。田舎の廃墟のような場所で、真夜中にもかかわらず、月明かりの下で黒い影が踊っているように見える。影は何度も重なり合い、奇妙な儀式のような動きをしていた。
その影の中に、一人の女性がぼんやりと浮かび上がった。彼女の顔は朧げで、その表情には深い悲しみと恐怖が刻まれていた。彼女が視線を田中に向けると、ビデオの中の彼女の口がゆっくりと動き、かすかに声が聞こえてきた。
「私を見つけて…」
その言葉を聞いた瞬間、田中は強烈な恐怖に襲われた。ビデオを止めようとするが、デッキはまるで故障したかのように操作を受け付けない。女性の声が次第に大きくなり、画面いっぱいに彼女の顔が映し出される。彼女の目は涙で濡れており、その涙がビデオテープの中を流れ出し、現実に溢れ出してくるように感じられた。
突然、画面が真っ暗になり、田中は息を飲んだ。静寂が訪れたが、心臓の鼓動だけが耳に響いていた。しかし、その直後、田中は何かが自分の背後に立っていることを感じた。恐る恐る振り返ると、そこには何もなかった。
安心して振り向いた瞬間、田中の目の前には、あの女性が立っていた。彼女はビデオの中のままの姿で、田中をじっと見つめている。恐怖で体が動かない田中に、彼女はゆっくりと近づき、冷たい手を彼の頬に触れた。
「ありがとう…私を見つけてくれて。」
その言葉を最後に、田中は意識を失った。
翌朝、田中は自分の部屋で目を覚ました。すべてが夢だったのかもしれないと思い、安堵のため息をつく。しかし、何かが違う。部屋中に異臭が漂っていることに気づく。視線を移すと、ビデオデッキが焦げたような跡を残しており、ビデオテープは無残に溶けていた。
その瞬間、田中のスマートフォンが鳴った。友人からのメッセージだ。「田中、あのビデオテープどうだった?」という簡単な質問だった。田中は震える手で返信を打とうとするが、突然画面が真っ暗になり、次に映し出されたのは、昨夜のビデオと同じ映像だった。廃墟の中で、黒い影が再び踊り始める。
そして、画面の中に新たに現れた女性が田中に囁く。
「次は、あなたの番…」
その瞬間、田中は自分がビデオの中に閉じ込められたことを悟った。今度は、誰かがこのビデオを見るまで、永遠に彼女とともにそこにいるのだという恐怖とともに。
数日後、田中の友人は彼からの返信がないことを不審に思い、彼の家を訪ねた。部屋は無人で、焦げたビデオデッキと共に、古びたビデオテープがぽつんと置かれていた。彼は興味本位でそのビデオテープを手に取ると、ただ一言、呟いた。
「ちょっと見てみるか…」
物語はここで終わるが、次の犠牲者はもうすでに決まっているのかもしれない。