怖い話「『転校生』――不気味な存在がもたらす恐怖」
17歳の高校生、翔太（しょうた）は、静かな田舎町の学校に通っていた。何の変哲もない日常を過ごしていた彼の生活に、ある日突然、異質な空気を持ち込む存在が現れた。それは、東京からの転校生だった。名は田中悠斗（たなか ゆうと）。彼の存在は、まるで町に嵐が吹き込んだかのような不穏な影を落とし始めた。
悠斗は、背の高い痩せた体格に、どこか冷たい雰囲気をまとっていた。クラスメートは彼に興味津々だったが、悠斗自身は誰とも話さず、常に一人でいることを好んでいた。無表情なその顔と、まるで何かを見透かすような瞳に、翔太は得体の知れない違和感を感じていた。
悠斗が転校してきてからというもの、クラスでは奇妙な噂が飛び交うようになった。「彼のいた東京の学校では、不可解な事件が立て続けに起こっていたらしい」「あの目を見た者は、必ず不幸になる」といった、まるで都市伝説のような話ばかりだ。誰もその噂の真偽を確かめることはできなかったが、日々増していく不安感は、クラス全体に広がっていった。
それから間もなく、翔太の周りでも不可解な現象が起こり始めた。教室でふと振り返ると、悠斗がこちらをじっと見つめている。目が合った瞬間、周りの空気が冷たく張り詰め、まるで時が止まったかのような感覚に襲われた。翔太は恐怖にかられ、慌てて目を逸らすが、その視線の余韻はしばらく消えなかった。
翔太は気味の悪さに耐えられず、悠斗の過去について調べることにした。放課後、学校の資料室に忍び込み、東京で彼が通っていたという学校の事件記録を探し出した。そこには、恐ろしい事実が記されていた。
悠斗の名前が載っているページには、次のような記述があった。「転校生、田中悠斗は不可解な現象と共に現れ、彼の周りにいた人々は次々に謎の死を遂げていった。最後には、彼自身の行方も不明となった。」そのページを読み終えた瞬間、翔太は背後に冷たい視線を感じた。
恐る恐る振り返ると、そこには悠斗が立っていた。彼の目は、どこか異次元の闇を映し出しているかのように深く、翔太はその目から目を逸らすことができなかった。悠斗の口がゆっくりと開き、低い声で囁いた。「逃げられないよ…僕の呪いからは。」
その日を境に、翔太の周りで次々と不幸な出来事が起こり始めた。家族が急病に倒れ、友人たちは謎の事故に巻き込まれた。翔太自身も日に日に体調を崩し、鏡に映る自分の顔がどんどん痩せ細っていく。だが、最も恐ろしかったのは、毎晩夢に現れる悠斗の姿だった。
夢の中で、悠斗は冷たい笑みを浮かべながら言う。「僕と同じ運命を辿るんだ、君も…」翔太は必死に抵抗しようとするが、目覚めるたびに身体の力が抜け、現実と夢の区別がつかなくなっていった。
やがて、翔太は学校にも行けなくなり、部屋に引きこもるようになった。家の窓から外を覗くと、そこには悠斗が立っている。彼の姿は、まるで幽霊のようにぼんやりと浮かび上がり、どこへ逃げてもその視線から逃れることはできなかった。
最後に、翔太が見たのは、自分のベッドの横に立つ悠斗の姿だった。彼は微笑みながら、冷たい手で翔太の肩に触れた。「さあ、次は君が転校生だ。」その瞬間、翔太の意識は真っ暗な闇に包まれ、気がつくと彼は知らない学校の教室に立っていた。そして、新しいクラスメートたちの注目を浴びる中、彼は「転校生」として紹介されるのだった。
