「前世の記憶で未解決事件を解決した少年」

前世の記憶 怖い話

怖い話「前世の記憶で未解決事件を解決した少年」

その村は、地図から消えたかのようにひっそりと存在していた。過去に起きた一つの悲劇が、村全体を呪いのように覆い尽くしていた。その事件は未解決のまま、村人たちの記憶からも、徐々に風化していくかのようだった。そんな村に、ひとりの少年、拓真が引っ越してきた。彼は14歳。都会から遠く離れたこの場所に、不安と好奇心を抱きながら、家族とともに新生活を始める。

引っ越して数日後、拓真は奇妙な夢を見るようになった。その夢は、古びた和室で起こる。彼はその部屋で、血に染まった刃物を握りしめ、目の前に横たわる女性の遺体を見つめていた。彼の手には血が滲み、心の奥底で強烈な後悔と恐怖が渦巻いていた。

目覚めたとき、拓真は全身が汗でびっしょりと濡れていた。しかし、その夢は一度だけでは終わらなかった。毎夜、同じ夢が彼を襲い、その度に彼はその不気味な場面に引き戻されていった。

ある日、夢の中で聞こえた女性の名前が、現実の世界でも繰り返し頭に浮かぶようになる。「咲良」というその名前は、どこかで聞いたことがあるように思えたが、どこで聞いたのか思い出せなかった。しかし、夢の中での感覚は、彼がその女性を知っていることを強く示していた。

拓真は学校で友達に尋ねた。「咲良さんって、知ってる?」村の歴史に詳しい老人が彼に答えた。「昔、この村で咲良という女性が行方不明になったんだ。あれは確か20年以上前のことだったな。今も未解決のまま、誰も彼女がどこに消えたのか知らないんだよ。」

拓真は村の中を歩きながら、自分が夢で見た場所を探し始めた。そしてついに、夢の中で見た家を発見する。それは、誰も住んでいない廃屋だった。薄暗い空間に足を踏み入れた瞬間、夢で感じた恐怖が現実のものとなり、彼の心を揺さぶった。

和室に入ると、彼はその場で一瞬にして夢の記憶が鮮明に蘇るのを感じた。その部屋は、彼が毎晩見ていた場所そのものだった。そして、目の前には薄く朽ち果てた畳が広がり、隅にある床下収納に目が留まる。

恐怖と好奇心が交錯する中で、拓真はその収納を開けた。中には、夢で見たものと同じ刃物があり、乾いた血痕がかすかに残っていた。それはまさに、彼が前世で手にしていたものだと確信した瞬間だった。

村の老人にその刃物を見せたところ、彼の顔が青ざめ、恐怖に震え始めた。「これは…咲良さんが行方不明になったときに、一緒に消えた凶器じゃないか。」老人はその場で警察に通報した。

警察が捜査を進める中、拓真は自分が何者なのかを徐々に理解し始めた。彼の夢はただの幻ではなく、前世の記憶が蘇ったものだったのだ。彼は前世で咲良を殺した犯人であり、今世でその罪を償うために、この村に戻ってきたのだ。

捜査が進むにつれて、遺体が床下から発見され、拓真の証言が決定的な証拠となった。しかし、それでも彼の心には深い闇が残った。前世の罪を告白することで、彼は自分自身を救うことができるのか、あるいは永遠に罪を背負い続けるのか、その答えは誰にもわからなかった。

事件が解決されたとき、村は再び静寂に包まれた。しかし、拓真は自分が二度と逃れることのできない運命に囚われていることを悟った。夜になると、再び彼は夢を見るようになった。今度は、咲良の視点から。彼女の無念と怨念が彼に襲いかかり、彼はその恐怖から逃れることができなくなったのだ。

そして、拓真は気づいた。過去は決して消えることはなく、罪は永遠に続くものであることを。彼の人生は、再び始まった悪夢の中で終わりなき恐怖に苛まれることとなるだろう。

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